ストーリー18

憧れの海へ、面舵いっぱい!

高橋 典子

有限会社マルカツ水産 漁師見習い

まだ見知らぬ世界の扉を、
開いてみたい。

 知らない世界がわかるって、楽しい!そのことに気づいたのは、中学時代の社会の時間。先生が面白くて、いろんなことが覚えられる歴史が好きになって、勉強も悪くないなって思うようになったんです。私、生まれ育った大迫町が大好きで、当時は地元のために働く公務員になるのが夢。いずれ地元に帰ってくるなら、若いうちに故郷とは全然違う海外に行って、知らない街並みを見たり、いろいろな人種の人たちに会ってみたいと思って、好奇心が未知の世界に向かっていったんです。
 高校は異文化を学ぶ国際科学学系コースへ進み、大学では国際関係論を専攻して、民族紛争を研究しました。世界で活躍する公務員を目指す道も考えましたが、大きな国際紛争も元をたどれば小さな地域の問題から生じるもの。地域課題を解決する地方公務員という選択は間違っていない、そう思って岩手県職員になったんです。最初の赴任先は、大船渡地域振興センター。ここでの出会いが、私の運命を大きく変えることになるとは想像もしていませんでした。

まだ見知らぬ世界の扉を、
開いてみたい。

 知らない世界がわかるって、楽しい!そのことに気づいたのは、中学時代の社会の時間。先生が面白くて、いろんなことが覚えられる歴史が好きになって、勉強も悪くないなって思うようになったんです。私、生まれ育った大迫町が大好きで、当時は地元のために働く公務員になるのが夢。いずれ地元に帰ってくるなら、若いうちに故郷とは全然違う海外に行って、知らない街並みを見たり、いろいろな人種の人たちに会ってみたいと思って、好奇心が未知の世界に向かっていったんです。
 高校は異文化を学ぶ国際科学学系コースへ進み、大学では国際関係論を専攻して、民族紛争を研究しました。世界で活躍する公務員を目指す道も考えましたが、大きな国際紛争も元をたどれば小さな地域の問題から生じるもの。地域課題を解決する地方公務員という選択は間違っていない、そう思って岩手県職員になったんです。最初の赴任先は、大船渡地域振興センター。ここでの出会いが、私の運命を大きく変えることになるとは想像もしていませんでした。

高橋典子さん
エピード

予測不能な将来のほうが、
人生は面白くなる。

 大船渡地域振興センターではまちを活性化する仕事に携わっていたのですが、県職員になって2年目の時に綾里地区のイベントに参加したんです。そこで出会った漁師さんの話が面白くて、土日になると毎週のように浜に通うようになって。ホタテやホヤの養殖を手伝ったり、定置網の船に乗せてもらったりするうちに、自分の努力が獲物として返ってくる漁師という仕事に、魅力を感じるようになりました。
 県職員の仕事も楽しかったんですが、その先の人生がだいたい見えたんですよね。でも、漁師になった自分を想像したら、どんな将来になるのか全然わからない。そこがね、いいと思ったんです。先の読める人生より、どんなに大変でも想像もつかない人生の方が、ひととして成長できるんじゃないかって。県職員4年目に一度本庁に戻ったのですが、どうしても綾里の人たちのことや漁のワクワク感が忘れられなくて…決めました。人生は短い。だったら、体力があるうちに好きなことをやろう。大好きな漁師になってやろう。きっぱりと県職員を辞め、綾里の浜に舞い戻りました。

予測不能な将来のほうが、
人生は面白くなる。

 大船渡地域振興センターではまちを活性化する仕事に携わっていたのですが、県職員になって2年目の時に綾里地区のイベントに参加したんです。そこで出会った漁師さんの話が面白くて、土日になると毎週のように浜に通うようになって。ホタテやホヤの養殖を手伝ったり、定置網の船に乗せてもらったりするうちに、自分の努力が獲物として返ってくる漁師という仕事に、魅力を感じるようになりました。
 県職員の仕事も楽しかったんですが、その先の人生がだいたい見えたんですよね。でも、漁師になった自分を想像したら、どんな将来になるのか全然わからない。そこがね、いいと思ったんです。先の読める人生より、どんなに大変でも想像もつかない人生の方が、ひととして成長できるんじゃないかって。県職員4年目に一度本庁に戻ったのですが、どうしても綾里の人たちのことや漁のワクワク感が忘れられなくて…決めました。人生は短い。だったら、体力があるうちに好きなことをやろう。大好きな漁師になってやろう。きっぱりと県職員を辞め、綾里の浜に舞い戻りました。

高橋典子さん
エピード

自分にしかできない
漁師のあり方とは?

 私の肩書きは、マルカツ水産の「漁師見習い」。うちの会社は大型船の漁がメインなので、使っていない小型船の操縦や管理を任され漁を始めました。最初は右も左もわからないため、船の動かし方やレーダーの読み方、漁のやり方など、先輩漁師の重男さんがサポートについて教えてくれるんです。朝5時に沖に船を出して、海底に仕掛けた筒を引き上げては、アナゴを獲って。これを繰り返しながら、ある程度まとまったら市場に出荷しています。
 海のこと、魚のこと、市場の売り高の変動など、ベテラン漁師には当たり前のことでも、こっちはまだ素人同然。わからないことはネットで調べたり、データをまとめて分析したりして、自分のものにするしかないのですが、それが私の強みにもなると思っています。浜育ちではないからこそできる考え方や方法、勘に頼らない根拠のある知識で勝負することができるんじゃないかなと。なにせ沖に出たら、漁師はみんなライバル。時には漁をめぐってカマをかけ合ったり、駆け引きをすることだってあります。しっかり独り立ちするには、自分で考えて、自分なりのやり方を見つけるしかないですから。

自分にしかできない
漁師のあり方とは?

 私の肩書きは、マルカツ水産の「漁師見習い」。うちの会社は大型船の漁がメインなので、使っていない小型船の操縦や管理を任され漁を始めました。最初は右も左もわからないため、船の動かし方やレーダーの読み方、漁のやり方など、先輩漁師の重男さんがサポートについて教えてくれるんです。朝5時に沖に船を出して、海底に仕掛けた筒を引き上げては、アナゴを獲って。これを繰り返しながら、ある程度まとまったら市場に出荷しています。
 海のこと、魚のこと、市場の売り高の変動など、ベテラン漁師には当たり前のことでも、こっちはまだ素人同然。わからないことはネットで調べたり、データをまとめて分析したりして、自分のものにするしかないのですが、それが私の強みにもなると思っています。浜育ちではないからこそできる考え方や方法、勘に頼らない根拠のある知識で勝負することができるんじゃないかなと。なにせ沖に出たら、漁師はみんなライバル。時には漁をめぐってカマをかけ合ったり、駆け引きをすることだってあります。しっかり独り立ちするには、自分で考えて、自分なりのやり方を見つけるしかないですから。

高橋典子さん
エピード

綾里と両思いになれたら、
一人前の証かも。

 よく「大変でしょ?」と聞かれることが多いんですが、苦労だと思うことは一つもないんです。言葉は悪くてもシャイで優しい人が多いし、困っていたら手を差し伸べてくれる人がたくさんいる。沖ではライバルでも、陸に上がれば仲間。そんな浜の気質や流儀が大好きで、ずっと綾里に片思いしている状態かも。今では生まれ育った大迫町と同じくらい、綾里も「自分の地元」という意識が強くなっていますね。
 だから、県職員を辞めて後悔したことは一度もありません。むしろここには、自分の手で仕事を切り拓き、自分の居場所をつくっていく楽しさがあります。最初は「どこの嫁だ?」と尋ねられるばかりでしたが、最近はようやく漁師と認めてくれる人も増えて、「どのくらい獲った?」と聞かれるようになりました。まだまだ半人前ですが、おばあちゃんになった時に浜で一番の漁師になることが夢。まずは、漁師の家に嫁いで、自分の船を持つことが目標なんですが、その前に結婚相手を探さないと…ですね(笑)。

綾里と両思いになれたら、
一人前の証かも。

 よく「大変でしょ?」と聞かれることが多いんですが、苦労だと思うことは一つもないんです。言葉は悪くてもシャイで優しい人が多いし、困っていたら手を差し伸べてくれる人がたくさんいる。沖ではライバルでも、陸に上がれば仲間。そんな浜の気質や流儀が大好きで、ずっと綾里に片思いしている状態かも。今では生まれ育った大迫町と同じくらい、綾里も「自分の地元」という意識が強くなっていますね。
 だから、県職員を辞めて後悔したことは一度もありません。むしろここには、自分の手で仕事を切り拓き、自分の居場所をつくっていく楽しさがあります。最初は「どこの嫁だ?」と尋ねられるばかりでしたが、最近はようやく漁師と認めてくれる人も増えて、「どのくらい獲った?」と聞かれるようになりました。まだまだ半人前ですが、おばあちゃんになった時に浜で一番の漁師になることが夢。まずは、漁師の家に嫁いで、自分の船を持つことが目標なんですが、その前に結婚相手を探さないと…ですね(笑)。

高橋典子さん
メッセージ
パーソナル情報

有限会社マルカツ水産

家族経営が多い漁師の世界で、漁師の生活基盤を安定させるため2002年に有限会社を設立。北は北海道から、南は関東方面まで、季節ごとに変わる魚を追いながら年間を通して船を出している。会社で主力となる19トンの船ではサンマ、モウカザメ、タラ、イサダなど、2.5トンの船ではアナゴやタコなどを漁獲。海で獲れた新鮮な魚を楽しんでもらうため、大船渡市内に飲食店も経営している。

会社情報

〒022-0211 大船渡市三陸町綾里字清水152-2/TEL:0192-42-2665/代表者:代表取締役 佐々木省吉/設立:2002年12月6日/資本金:300万円/事業内容:沿岸漁業、小型船漁業、飲食店経営 等/従業員数:20名

22の物語

メッセージ
パーソナル情報

有限会社マルカツ水産

家族経営が多い漁師の世界で、漁師の生活基盤を安定させるため2002年に有限会社を設立。北は北海道から、南は関東方面まで、季節ごとに変わる魚を追いながら年間を通して船を出している。会社で主力となる19トンの船ではサンマ、モウカザメ、タラ、イサダなど、2.5トンの船ではアナゴやタコなどを漁獲。海で獲れた新鮮な魚を楽しんでもらうため、大船渡市内に飲食店も経営している。

会社情報

〒022-0211 大船渡市三陸町綾里字清水152-2/TEL:0192-42-2665/代表者:代表取締役 佐々木省吉/設立:2002年12月6日/資本金:300万円/事業内容:沿岸漁業、小型船漁業、飲食店経営 等/従業員数:20名

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