ストーリー06

時を超える、
岩谷堂箪笥。

三品 綾一郎

株式会社岩谷堂タンス製作所 専務取締役(13代目)

5年間の修業で得たもの。

 僕の家は、江戸時代から230年以上続く「岩谷堂箪笥」の製作所です。岩谷堂箪笥は、国から指定を受けた岩手の「伝統的工芸品」。箪笥本体の組み立てから仕上げ作業まで、全て職人の手仕事によってつくられています。僕は、子どもの頃から作業所に出入りし職人さんが働く様子を眺めていたせいか、箪笥ができる工程は自然に覚えていました。
 長男として家を継ぐと、はっきり意思が固まったのは関東にある箪笥の卸問屋に就職してから。流通の現場を学び、お客様の声を直接聞くことができた貴重な時間でした。商品の配送業務を通して商品に対するシビアな評価を聞くことができたし、箪笥が生活空間を創りあげる大切なコンテンツなのだと捉えるようになりました。また、営業現場で売る苦労を重ねる中、岩谷堂箪笥の特徴は何か、その価値をどう伝えるかを改めて学びました。家業を継ぐだけでなく、岩谷堂箪笥全体のクオリティをどう上げていくか、今後の課題を見せつけられた5年間。本格的に箪笥の世界に入るべく、岩手へ帰ってきたのは25歳の時でした。

三品綾一郎さん

5年間の修業で得たもの。

 僕の家は、江戸時代から230年以上続く「岩谷堂箪笥」の製作所です。岩谷堂箪笥は、国から指定を受けた岩手の「伝統的工芸品」。箪笥本体の組み立てから仕上げ作業まで、全て職人の手仕事によってつくられています。僕は、子どもの頃から作業所に出入りし職人さんが働く様子を眺めていたせいか、箪笥ができる工程は自然に覚えていました。
 長男として家を継ぐと、はっきり意思が固まったのは関東にある箪笥の卸問屋に就職してから。流通の現場を学び、お客様の声を直接聞くことができた貴重な時間でした。商品の配送業務を通して商品に対するシビアな評価を聞くことができたし、箪笥が生活空間を創りあげる大切なコンテンツなのだと捉えるようになりました。また、営業現場で売る苦労を重ねる中、岩谷堂箪笥の特徴は何か、その価値をどう伝えるかを改めて学びました。家業を継ぐだけでなく、岩谷堂箪笥全体のクオリティをどう上げていくか、今後の課題を見せつけられた5年間。本格的に箪笥の世界に入るべく、岩手へ帰ってきたのは25歳の時でした。

エピード

伝統と進化のはざまで、
試行錯誤した時間。

 実家では、現場で仕事を覚える傍ら、職業訓練校にも通いました。職人さんは皆、子どもの頃から知っている人ばかり。様々なアドバイスを聞きながら、自分なりのやり方を見つけてきました。
 岩谷堂箪笥の購入数は昔に比べて全体的に減っており、全国区のブランドにも関わらず「いわたにどう」と思っている人も多いほどです。一方で、結婚する時に買ってもらえばよかったと後悔する声も…。そこで、岩谷堂箪笥を知るきっかけにと、岩谷堂箪笥生産協同組合の職人で「岩谷堂くらしな」というブランドを立ち上げたんです。箪笥の製法を生かしながらも身近に使える道具が中心で、軽くしようと金具をはずしてみたところ、「邪道じゃないか」と言われたり。結局、伝統に縛られて今一つ振りきれない歯がゆさもありました。

伝統と進化のはざまで、
試行錯誤した時間。

 実家では、現場で仕事を覚える傍ら、職業訓練校にも通いました。職人さんは皆、子どもの頃から知っている人ばかり。様々なアドバイスを聞きながら、自分なりのやり方を見つけてきました。
 岩谷堂箪笥の購入数は昔に比べて全体的に減っており、全国区のブランドにも関わらず「いわたにどう」と思っている人も多いほどです。一方で、結婚する時に買ってもらえばよかったと後悔する声も…。そこで、岩谷堂箪笥を知るきっかけにと、岩谷堂箪笥生産協同組合の職人で「岩谷堂くらしな」というブランドを立ち上げたんです。箪笥の製法を生かしながらも身近に使える道具が中心で、軽くしようと金具をはずしてみたところ、「邪道じゃないか」と言われたり。結局、伝統に縛られて今一つ振りきれない歯がゆさもありました。

三品綾一郎さん
エピード

岩谷堂箪笥の
新しい扉をひらく。

 そんな反省を生かし、実験的につくりはじめたのが箪笥の端材を再利用した「Iwayado craft」シリーズ。最初に手がけたのが6種類のブローチです。伝統工芸と一線を画し、もう少し身近なものをつくりたいという気持ちから生まれたもので、ブローチのデザインは妻が担当しました。暮らし周りのものは女性がつくる方が説得力ありますね。
 最初は、こんなの売れるのかと言われましたが、2013年の販売から1年ほど経った頃から、徐々にファンが増え、あちこちから声がかかりました。少しずつアイテムを増やし、現在は東京都内の販路も広がっています。重厚な岩谷堂箪笥とのギャップ、端材を使うというストーリーが現代のライフスタイルを捉えているのかもしれません。ブランド名をローマ字表記にしたのは「いわや」という音を覚えてもらいたいから。僕と同世代の30代は、岩谷堂箪笥の価値を一番知ってほしい世代です。若い世代がブローチや生活雑貨をきっかけに岩谷堂箪笥を知ってくれて、いつか家具を買おうと思った時、僕たちがつくった箪笥を選択肢にあげてくれたら嬉しいです。

岩谷堂箪笥の
新しい扉をひらく。

 そんな反省を生かし、実験的につくりはじめたのが箪笥の端材を再利用した「Iwayado craft」シリーズ。最初に手がけたのが6種類のブローチです。伝統工芸と一線を画し、もう少し身近なものをつくりたいという気持ちから生まれたもので、ブローチのデザインは妻が担当しました。暮らし周りのものは女性がつくる方が説得力ありますね。
 最初は、こんなの売れるのかと言われましたが、2013年の販売から1年ほど経った頃から、徐々にファンが増え、あちこちから声がかかりました。少しずつアイテムを増やし、現在は東京都内の販路も広がっています。重厚な岩谷堂箪笥とのギャップ、端材を使うというストーリーが現代のライフスタイルを捉えているのかもしれません。ブランド名をローマ字表記にしたのは「いわや」という音を覚えてもらいたいから。僕と同世代の30代は、岩谷堂箪笥の価値を一番知ってほしい世代です。若い世代がブローチや生活雑貨をきっかけに岩谷堂箪笥を知ってくれて、いつか家具を買おうと思った時、僕たちがつくった箪笥を選択肢にあげてくれたら嬉しいです。

三品綾一郎さん
エピード

現代のくらしに溶け込む、
ものづくりを。

 時代の流れもあり、ものづくりの現場に関心を持つ買い手も増えてきました。最近は、催事やイベントに職人を連れ出すこともあります。それが、お客様と岩谷堂箪笥の新しい接点となり、職人にとっても新しい発見につながるはず。かつて中心市場であった百貨店が和家具売り場を縮小しつつある今、岩谷堂箪笥をどこで買ったらいいか迷うお客さんも多いようです。つまり、僕たちが的確な発信をしていけば、きっとマーケットは広げられる。そこに僕は、大きな可能性を感じています。
 時代に合わせた新しい仕掛けをしても、根っこにあるのは先祖から続く岩谷堂箪笥。よく「13代目ってすごいですね」とも言われますが、じつはその重さを意識したことはないんです。ただ、「木工屋としてお客様に良いものをつくって届けたい」という気持ちは、父も、そのまた父の父も、変わらない想いだったのかもしれません。守るべき伝統をしっかり受け継ぎ、使い手の視点を持ちながら柔軟に新しい発想を取り入れていきたい。岩谷堂箪笥が、数百年後のライフスタイルの中にもあるように。

現代のくらしに溶け込む、
ものづくりを。

 時代の流れもあり、ものづくりの現場に関心を持つ買い手も増えてきました。最近は、催事やイベントに職人を連れ出すこともあります。それが、お客様と岩谷堂箪笥の新しい接点となり、職人にとっても新しい発見につながるはず。かつて中心市場であった百貨店が和家具売り場を縮小しつつある今、岩谷堂箪笥をどこで買ったらいいか迷うお客さんも多いようです。つまり、僕たちが的確な発信をしていけば、きっとマーケットは広げられる。そこに僕は、大きな可能性を感じています。
 時代に合わせた新しい仕掛けをしても、根っこにあるのは先祖から続く岩谷堂箪笥。よく「13代目ってすごいですね」とも言われますが、じつはその重さを意識したことはないんです。ただ、「木工屋としてお客様に良いものをつくって届けたい」という気持ちは、父も、そのまた父の父も、変わらない想いだったのかもしれません。守るべき伝統をしっかり受け継ぎ、使い手の視点を持ちながら柔軟に新しい発想を取り入れていきたい。岩谷堂箪笥が、数百年後のライフスタイルの中にもあるように。

三品綾一郎さん
メッセージ
パーソナル情報

株式会社岩谷堂タンス製作所

岩手県の伝統的工芸品の一つである「岩谷堂箪笥」を、江戸時代中期・天明2年から作り続けてきた「株式会社岩谷堂タンス製作所」。同社の13代目にあたる三品綾一郎さんは今年37歳。職人として工房に入る傍ら、岩谷堂箪笥の良さを若い世代に知ってもらうべく、オリジナルブランド「Iwayado craft」を立ち上げたり、体験型イベント「平泉五感市」の運営など、新しいことに果敢なチャレンジを進めている。

会社情報

〒023-1131 奥州市江刺区愛宕字海老島63-1/TEL:0197-35-6016/代表者:代表取締役 三品健悦/設立:1979年5月/資本金:2,400万円/事業内容:江戸時代から続く岩谷堂箪笥(伝統的工芸品)の製造/従業員数:14名

22の物語

メッセージ
パーソナル情報

株式会社岩谷堂タンス製作所

岩手県の伝統的工芸品の一つである「岩谷堂箪笥」を、江戸時代中期・天明2年から作り続けてきた「株式会社岩谷堂タンス製作所」。同社の13代目にあたる三品綾一郎さんは今年37歳。職人として工房に入る傍ら、岩谷堂箪笥の良さを若い世代に知ってもらうべく、オリジナルブランド「Iwayado craft」を立ち上げたり、体験型イベント「平泉五感市」の運営など、新しいことに果敢なチャレンジを進めている。

会社情報

〒023-1131 奥州市江刺区愛宕字海老島63-1/TEL:0197-35-6016/代表者:代表取締役 三品健悦/設立:1979年5月/資本金:2,400万円/事業内容:江戸時代から続く岩谷堂箪笥(伝統的工芸品)の製造/従業員数:14名

22の物語